こんにちは。たいようです!
今回は、教育現場における「カイゼン思考」と「デザイン思考」について考えてみたいと思います。
🔷本記事の信頼性
🔷教員の仕事術
4つの思考サイクル
我々は普段、自分の思考方法を明確に意識して生活しているわけではありません。
しかし、思考の枠組みを意識して行動することで、得られる結果は大きく変わる可能性があります。
『直観と論理をつなぐ思考法』では、4つの思考サイクルを示しています。
この4つの思考サイクルを「教員の仕事」という文脈で考えると、こういう図になるのではないかと思います。
目の前の生徒を相手に仕事をする我々教員は、常に何かしらのissue(問題)を解決することが求められます。
そういう意味でissue drivenの「カイゼン思考」と「デザイン思考」が、学校現場で求められる思考法なのではないでしょうか。
カイゼン思考
PDCAサイクルを回せ!
「カイゼン思考」とはPDCAによる仕事の効率化を目指すということ。
「PDCAサイクルを回せ!」というフレーズは、仕事人であれば一度は聞いたことがあるはず。いわゆるPlan(計画)Do(実行)Check(評価)Action(改善)です。
Plan(計画)の段階では、次のことがポイントであるとされています。
- 具体的な目標を設定する
- 5W1H(だれが/いつ/どこで/なにを/なぜ/どのように)の要素を盛り込んだアクションプランを立てる。
- 数字で把握できる指標を用いる。
Do(実行)では
- 計画は有効か?
- 別の方法が考えられないか?
という視点を持ちながら行動し
Check(評価)では
- 設定した目標やアクションプランが達成できているか?
- 計画通りに実行できたかどうか?
を確認し
Action(改善)の段階で
- 引き続き計画通りに進めるべきか
- 計画を続ける中でいくつかのポイントを改善べきか
- 計画を中止あるいは延期するべきか
という検討をして、次の行動(plan)につなげるということです。
こうやって、らせん状に発展していくのがPDCAサイクルです。
カイゼン思考と教員の仕事
PDCAサイクルを回す「カイゼン思考」は、「正解がある世の中」で機能する思考です。
例えば世界トップの自動車生産数を誇ったトヨタの「カイゼン」は、世界中の企業のベンチマークになりました。
しかし、現代はVUCA(V:変動性 / U:不確実さ / C:複雑性 / A:不明瞭さ )と呼ばれる正解のない時代。
「正解がある」前提のカイゼン思考とは違うアプローチが求められているのは事実です。
しかし、常に何かしらのissue(問題)を解決することが求められる「学校」という文脈では、「カイゼン思考」は必要です。
児童生徒の教育を司る学校のシステムでは、失敗を許容する実験的なアプローチは取り入れづらく、どうしても「変化」より「安定」を求める傾向にあるからです。
カイゼン思考は学校現場のどんな場面で使われる?
校務分掌やクラス経営において「カイゼン」は必要な思考です。
学校の教育活動を円滑に進めていくためには、大きく変化するというリスクはなかなかとれない。
スモールチェンジが最適解。PDCAサイクルをどんどん回していきましょう。
校務分掌では、年度初めに分掌目標を立て5W1Hを明確にしたアクションプランを立てるかと思います。PDCAのP(Plan)の部分ですね。ここで数値目標を入れてみましょう。
例えば、すべてのタスクに締め切りを設定するということです。「何月何日までに誰が何をどのようにする」という具体的な目標を設定することで、担当する仕事に具体的なイメージを描きやすくなります。
デザイン思考の3つの本質
『直観と論理をつなぐ思考法』の著者である佐宗氏は、デザイン思考の本質を3つ挙げています。
プロトタイピング:手を動かして考える
両脳思考:五感を活用して統合する
人間中心共創:生活者の課題をみんなで解決する
子供が遊んでいる場面を想像してみてください。
深く考えて立ち止まるのではなく、失敗を考えることもなく、とにかく手を動かしますよね。
彼らは不完全でもプロトタイプ(試作品)をアウトプットし、自分なりの完成品に近づけていくのです。
この「子供のように手を動かす」のがデザイン思考の大前提です。
アウトプットを修正するプロセスの中で、論理的(左脳的)な分析だけでなく、直観的(右脳的)な発想も必要になります。
佐宗氏は言います。
直感と論理とのあいだを自在に行き来する「往復運動」こそがデザイン思考の本質と言えるだろう。
『直感と論理をつなぐ思考法』
つまり複眼的なアプローチが大切であるということ。自分一人での内省には限りがあるので、多様な意見を参考にするという素直さも大切な要素になってきます。
デザイン思考で授業をデザインしよう
プロトタイピング
下の図は、「構築主義の学習モデル」。デザイン思考のプロセスを簡略化したものです。
まずは「①問いかけ」フェーズ。
「〇〇の学習をすることで、生徒に〇〇の力を身につけさせる」という、生徒の実態に応じた具体的な目標を設定することからスタートします。
自分自身に問いかけましょう。
それから「②つくる」フェーズに進みます。
英語教育という文脈で考えると、4技能 (Reading, Listening, Writing, Speaking)+文法(Grammar)をバランスよく取り入れることが理想です。
自分の経験や直観を大切にしつつも、第二言語習得(Second Language Acquisition) やTESOL、あるいはInstructional Designなどの理論を参照してみましょう。
1コマの授業で全ての技能にフォーカスすることが無理な場合は、2コマ単位で一つの授業パッケージを完結するというスケジュールにするとよいでしょう。
- 生徒の実態に応じた現実的な目標を設定しよう
- 最初のプロトタイプは綿密に行おう
- 経験側と理論のベストマッチを探ろう
フィードバック・ループを回す
プロトタイプが完成したら、アウトプットします。つまり授業を行います。
状況に応じて修正を加えていくわけですが、第三者からのフィードバックが必要になります。これが「③対話する」フェーズです。
方法は3つあります。
①生徒からの授業アンケートを定期的に行うこと。できれば単元ごとに行うとよいです。
②自分の授業を動画で撮影すること。
しかし一番簡単で持続可能な方法は
生徒との対話や反応から、自分自身の授業を常に振り返り、変化させていくこと
これが一番大切ではないでしょうか。
このようにフィードバック・ループを回しながら、自分の授業を進化させていきましょう。
生徒の視点で振り返る
最後に「④振り返る」フェーズですが、次の2つの観点から授業を振り返りましょう。
- 自分自身のパフォーマンスはどうだったのか?
- 生徒にとって満足できる授業だったのか?
③の対話フェーズでもらったフィードバックをもとに、自分自身のパフォーマンスを客観的に振り返ります。
その際に、「生徒側の視点」と「自分自身の視点」双方から振り返りをしましょう。
自分のパフォーマンスを分析するのとは違い、生徒の視点で振り返るには適切な想像力が必要になります。
「自分が生徒として授業に参加していたら?」という視点で、謙虚に、そして批判的に振り返りましょう。
その振り返りをもとにまた新たなプロトタイプを作っていく。授業デザインとは、この繰り返しなのです。
自分の授業を生徒の視点で批判的に分析しよう
まとめ
今回は、学校現場における「カイゼン思考」と「デザイン思考」について考えてみました。
すでにこういうプロセスを踏んで授業をデザインしているという先生方も多いかと思います。
それを言語化しただけかもしれませんが、新しい発見があったとしたら幸いです。
今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。